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また読みたい「歴史本」

「歴史本」でおすすめできる本がないか考えてみたが、自身を持っておすすめできるものはなかった。

以下に紹介するのは自分がもう一度読むべきだと思う本。

前近代の世界貿易

ヨーロッパ覇権以前〈上〉―もうひとつの世界システム

ヨーロッパ覇権以前〈上〉―もうひとつの世界システム

リオリエント 〔アジア時代のグローバル・エコノミー〕

リオリエント 〔アジア時代のグローバル・エコノミー〕

世界システム論といえばイマニュエル・ウォーラステインだが、彼の本はまだ読んでいない。全部は読めないので川北稔氏のあんちょこ本を読もうと思っている。

さて、上の二冊の本だが近代以前の世界貿易に関する本。二冊とも随分前に読んだ本なので中身を忘れてしまった。『ヨーロッパ覇権以前』を読んだ時はインドと東南アジアの歴史に興味が湧いてそれらの概説書を読んだものだ。

『リオリエント』は中国こそ世界貿易の心臓部だったと主張する。アヘン戦争は「銀の戦争」でもあったわけだが、前近代は中国は銀が集まる場所だった。それだけ中国は輸出すべき商品を持っていた。

世界史の誕生とイスラーム

世界史の誕生とイスラーム

最初の二冊に関連して宮崎正勝氏の本二冊。

世界貿易のネットワークは実はムスリムが作ったのではないかという話。世界史の誕生といえば岡田英弘世界史の誕生』でモンゴル人が世界史を作ったという主張だが、宮崎氏はその前にムスリムが作ったと主張している(?)。

たしか『イスラム・ネットワーク』に書いてあったことだが、モンゴル帝国に世界各地から銀が集まったのだが、その銀は大ハーンである元朝皇帝が他のハン国に配った。『リオリエント』によれば、明朝・清朝が集めた銀は貨幣になった(と思う、売る覚え)。

モンゴル帝国の頃は銀が血流のように回っていたのだが、その後、「心臓部」に溜まる一方だった。これを打開したのがアヘン戦争だった。

近代科学への長い助走

中世の覚醒―アリストテレス再発見から知の革命へ

中世の覚醒―アリストテレス再発見から知の革命へ

近代科学の源流 (中公文庫)

近代科学の源流 (中公文庫)

十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)

十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)

この手の話は古代ギリシア哲学やキリスト教イスラム教の歴史に通じていないと腑に落ちないだろう。私は腑に落ちなかった。

それでも『中世の覚醒』は面白かった。《第2章 「レディ・フィロソフィー」の殺人》は古代ギリシア哲学の学者ヒュパティア女史がキリスト教徒に虐殺された話を描いている。古代ギリシアの学統がヨーロッパ世界から消える象徴的な事件だ(実はビザンツでほそぼそと学統は続いていた)。

この事件を映画にしたのが↓。

アレクサンドリア [DVD]

アレクサンドリア [DVD]

いつか見よう。

さて、ヨーロッパに捨てられたギリシャ哲学はイスラム教徒が拾った。いわゆる中世の「イスラム科学」はヨーロッパの近代科学の先駆けとなる。

また中世・近世の学者たちはアラビア語の書物から古代ギリシャ哲学を訳して学んだ(ギリシア哲学の書物は西欧には無かった。ビザンツでは学統は続いていて、西欧人は呼び寄せたそうだ。お雇い外国人)。

マニアック

興亡の世界史 通商国家カルタゴ (講談社学術文庫)

興亡の世界史 通商国家カルタゴ (講談社学術文庫)

カルタゴの歴史と見せかけてフェニキア人の歴史。

唐帝国の歴史と見せかけてソグド人の歴史。

フェニキア人とソグド人は商人の民族。ユダヤ人と違うのはホームグラウンドがあったこと。ホームグラウンドを滅ぼされると彼らは滅びた(同化して消滅した。これが普通なのだ。ユダヤ人が異質なのだ)。

人類の進化

おそらく標準的な人類進化史。私は上巻しか読んでいないので、著者の一番言いたかった「ミスマッチ」の話は分からない。

人類進化の謎を解き明かす

人類進化の謎を解き明かす

ダンバー数」で有名。ホモ・サピエンスは「社会脳」の肥大化により複雑な物事を処理することが可能となり、他の人種を圧倒できた。

中身はTV番組らしいチャラさがあるが、関わっている学者たちは(おそらく)著名人が並んでいる。さすがNHK

人類進化の追求は、現在も議論が盛んで、数年前の本を読んで分かったフリはできない。

小説

三国志はこれが一番!

沖縄 悲遇の作戦―異端の参謀八原博通 (光人社NF文庫)

沖縄 悲遇の作戦―異端の参謀八原博通 (光人社NF文庫)

第二次大戦の歴史はちゃんと勉強していない。とりあえず小説だけ読んだ。臨場感はあったような気がする。

むかし、小説で歴史を勉強することができるといった人がいるが、絶対できない。小説・映画などはあくまでも補完的なもの、もしくは娯楽だ。

最後に

歴史ファンは中公や山川の概説書シリーズを通読しているのが普通なのだろう。私はしてないが。

概説書と称する本でも著者の研究がほぼ全部だったりするので(『興亡の世界史 シルクロード唐帝国』がその代表!)、概説書と言えない概説書が結構多い。それでも面白ければそれでいいのだが。

また概説書シリーズは結構古い。中公も山川も岩波その他も新シリーズを出してほしい。